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うちなびく、ネタバレあとがき。※ネタバレます。2019.03.30

うちなびく、完結しました。
だいたいなにかを書きはじめるときには、まるで直感のように場面がババーっと思い浮かんで書く場合と、「ん~こういう展開にしよっかな」とスローな気持ちで書き始めてだんだんノッて来る場合と2パターンなのですが、うちなびくはめちゃくちゃ前者でした。

ところで、結講なぞの多い物語だったのと、古典との絡みが多い話だったので、ネタバレとあとがきをまぜてちょっとこのお話について語ってみようと思います。
最後まで読んでいない方は、ネタバレてしまうため、ご注意くださいね。
 
 
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『うちなびく』は、古典ではある言葉を引き出す枕詞として、和歌に使われることが多いです。
語そのものとしては、草木がざわざわなびくという意味と、その方に心が寄るということでなびくという意味があります。魂が引き合うようなイメージでつけました。
そして『うちなびく』は、枕詞として春や黒髪といった語を導いています。

また、源氏物語の朧月夜の君は物語中に実在する人物ですが、光源氏との出会いは「照りもせず曇りもはてぬ春の夜の朧月夜にしくものぞなき」という和歌が発端となります。

春の夜は桜の季節、花は鬼が愛するものであること、黒髪は美しい女性の比喩、朧月夜の君と源氏物語との出会いやその顛末、そういった古典のならわしやキーワードから、今回の話の大まかな造形が出来上がったイメージです。

(雲隠六帖は実在しますが、霞隠の日記は実在しません……源氏物語が真実というあたりも全くのフィクションです)

源氏物語中で、朧月夜の君は光源氏の所属する左大臣派(財界の派閥みたいなもんです)ではなく、右大臣派の娘さんとして大切に育てられていました(六の君という言い方は「六番目の娘」という意味を示しており、朧月夜の君は末っ子として将来を期待されていたのです(=つまり天皇様への入内です。これをして入内した娘が子どもを生むと、それが東宮になり、その一派が政権を握れるので)が、光源氏との恋愛と逢瀬がバレてしまって以来、確実といわれていた朱雀帝への入内という未来が絶たれました。

それでも朱雀帝は朧月夜の君を本当に好きだったので、お世話係(ほぼ嫁さん)としてそばに置いていたのですが……。朧月夜の君は美しい姫君として最後まで光源氏と朱雀帝の間で揺れましたが、最後は朱雀帝とともに出家をし、光源氏をきっぱりと拒むようになっていきます。

一見するとトラブルメーカーでとんでもなく遊び人な方にも見えるかもしれませんが、私は朧月夜の君の物語を読んだときに、なんだかいじらしい方だなあと何度か思っていて、しあわせになれる道がないのかなあと思ったことがあります。
そんなこともあり、もうひとつの新しい朧月夜の君の物語が出来上がったということなのでした。

はたしてこれが正解なのかはわかりませんが……。

先生の名前はありませんが、朧月夜の君の生まれ変わりである主人公の葉月は『春の月=春月』から取り、光源氏の生まれ変わりとして書かれる松原は『松=待つ人』の意味でつけています。春の夜をモチーフにした、輪廻転生の物語ということです。

先生が作中どこまでが策略で、どこからが誤算だったのか――それは大した問題ではないので明かしませんが、かつての朧月夜の君であり今は葉月という名前の少年を心底大切にするための計画を、千年の間誓っていたのは間違いないです。

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